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【漫画の感想】ハロー デウス・エクス・マキナ

ハロー警報

 

こんにちは。ハローキティです。

キティちゃんの頭についてるハローって名前じゃないんですね。この感想を書くにあたって調べて初めて知りました。言われてみればそりゃそうだって感じだけど。

 

本日は漫画作品「ハロー デウス・エクス・マキナ(7巻完結)の感想について語っていきたいと思います。微ネタバレくらいの範疇で話すので布教だと思って読んでくれるとありがたいです。読め。

この作品について一言で説明すると「メタネタの極致」

メタネタや漫画的表現を話の題材として展開されるコメディ漫画です。ノリ的には絶望先生に近い。

 

以下ざっくりあらすじ紹介。

主人公の作場ナナシは自分の存在している世界を漫画、ゲーム、小説などのフィクションであると確信している高校生。同時にこの世界にはフィクションの世界において欠かせないご都合主義(デウス・エクス・マキナ)が存在することも確信している。

そんな彼のクラスに転校生として(ここご都合主義)、ナナシの隣の席になったメインヒロイン(ここご都合主義)、楠マキナ(ここデウス・エクス・マキナ)が現れる。一文で3回もご都合主義を入れさすな。ちなみにこの露骨なご都合主義に対してはちゃんとナナシくんがツッコミます。そういう漫画です。

そうしてナナシとマキナが所属する文芸部の部室でありとあらゆるメタネタに切り口を入れる物語が展開していく。そんな感じ。

この作品の話するときデウス・エクス・マキナって単語めちゃくちゃ出てくるから長くて大変なんだよな。

 

 

以下主要キャラの紹介とか。この作品独特なキャラが多いせいでちゃんと話さないと作品の話が進めづらすぎる。

 

*文芸部

前述した通りナナシとマキナが所属するのが文芸部。部員については後述しますが、ナナシの妄言(フィクションの世界とご都合主義)に付き合う奴らの集まり。部員の全員が世界がフィクションであると確信している。こんな奴らに学校の文芸部の枠が奪われてるのあんまりすぎるだろ。

 

*作場ナナシ(さくばななし)

主人公。高校3年生の男の子。名前の由来は「作り話」。

前述した通りこの世界を陰で動かすデウス・エクス・マキナシャドーボクシングをしているやべー奴。

物語の起承転結の起と承の立ち位置が多い。フィクションにおいて使われるメタネタをナナシが話題が出して、それをその回の題材として進行していくのがお決まりの流れ。

 

デウス・エクス・マキナの正体を暴いて自分に干渉しないようにするのを目的に行動している。理由は自分の行動・選択が自分の意志によるものであることを確信して生きていきたいため。文芸部で一番文芸してない部員なのに思想が哲学か文学拗らせたタイプの陰キャなのがおもろい。

親友の小野寺マトに創作ネタ要員を兼ねて勧誘され文芸部に所属する。いろんな作品に触れる機会が多く、フィクションに関する知識を集めることができるため文芸部は自分に合っていると思っている。読者はそうは思っていません。

転校してきたマキナをデウス・エクス・マキナであると確信し、なんやかんやあって文芸部に引き込む。なんやかんやあるのだ。

やべー奴だけど痛々しいと頭のおかしいの中間くらいのやばさなので、ツッコミに回ることができる程度の理性はある男。

ツッコミ役というよりは、このメタネタ、○○じゃないか!と提言するタイプ。

物語の進行スタイル含めてノリが絶望先生っぽいって言ったのはこの辺にあると思う。

 

 

 

 

*楠マキナ(くすのき まきな)

メインヒロイン。3-6に転校してきた女の子。名前の由来は「デウス・エクス・マキナ」。

目に星マークが入っており天使の輪が頭の上に浮いているいたって普通の女の子。見た目がめっちゃ好み。目の中に変な模様とか入ってるキャラクター好きなんですよね。この子見て表紙買いしたとこある。

ちなみに頭の天使の輪は投げて武器にされたりノコギリ代わりにされたりもする。もっと大事にして。

 

常に笑顔なのがかえって機械的な雰囲気を出してて大変かわいい。

他者からデウス・エクス・マキナであることを疑われると決まって「私はデウス・エクス・マキナではないですよ」と笑顔で返す。作品におけるテンプレやり取りっていいよね。

デウス・エクス・マキナであることについては否定しているものの、デウス・エクス・マキナの存在や世界がフィクションであることについては肯定的。表情のパターンが無表情と笑顔くらいしかないのはどんな事態が起きてもご都合主義でなんとかなるという余裕の表れなのかもしれない。強すぎる。

 

機械的な雰囲気と作品自体のコメディの雰囲気もあってナナシに恋愛感情は抱いていないかと思いきや、この漫画がいつでも恋愛ジャンルに方向転換できるようにしっかりと恋愛感情はあるらしい。

カップリング厨の皆さん!!!恋愛ものです!!!!!

本人曰く「隙を見せたら押し倒してぶちしたいと思っている程度の好意はある」らしい。

……恋愛もの!!………です!!!!

同じくジャンルの方向転換に備えて料理や釣りや除霊など多才な心得があるらしい。方向転換先として想定してるジャンルがニッチすぎませんか?執筆もできるけど文芸部の部員らしい活動をしている様子はほぼない。なんで???

 

起承転結の「転」の立ち位置が多い女。デウス・エクス・マキナって本来のところで言えばご都合主義として物語を解決や終幕に導くポジションな気がしますが、彼女はどちらかといえば物語を成立させるために事を起こすご都合主義ポジション。絶望先生で言うところの「世にも奇妙のタモリの立ち位置」。

「文芸部バース」の回ではナナシ達がマルチバースの話をしたのちに「この話をしたということはこれからそういう展開が始まるということです!」というメタすぎる先読み発言で強引に場面転換を行った。やりたい放題か?

 

この子のキャラ紹介だけ長くなっちゃった。めちゃくちゃな属性を持ちすぎているので……ご都合主義存在すぎて好きです。

 

*小野寺マト(おのでら まと)

主人公の親友ポジションにして文芸部の部長。名前の由来は「オノマトペ」。

文芸部で唯一文芸部らしい活動をしている男。それでいいのか文芸部。

マキナに「絵に描いたような親友ポジションですね!」と評されて「絵に描かれた存在だからな」と返す程度には世界がフィクションであることを確信している男。登場人物内では常識人ポジションのはずなのに頭文芸部すぎる。

世界をフィクションであると仮定するならば、自分が物語を生み出すことも世界の創造に値するという考えから執筆をしている。

 

名前の由来でもある通り、漫画内の擬音(オノマトペ)吹き出しを自由自在に操ることができる。なんで?

最初にメイン張った回のタイトルが「擬音祭」なのがしょーもなさすぎて好き。

彼が擬音を使いこなすのが当たり前になってきたくらいの回では、しれっと吹き出しを盾にしてページの裏から飛んできた手裏剣やテロリストが放った銃弾を防いだり擬音を攻撃手段にしたりしている。文芸部内で最もタンクの素養がある男。何故文芸部なのに戦闘を……

吹き出しを材料にイカダを作ったりもする。やりたい放題か?擬音を操るというよりどちらかといえば具現化系の類いだろこいつ。

彼自身と擬音の繋がりが密接なので、彼が熱を出した「独白の恋人」の回では擬音や吹き出しも影響を受けて調子が悪くなり、吹き出しを使った会話が不可能になった。なんで?

 

常識人枠のはずだけど適応能力がめちゃくちゃ高いので特にツッコミ役には回らずに物語の進行に身を任せることも多い男。大体の出来事を「興奮してきたな」で済ますサンドウィッチマン的な強さがある。

親友ポジはこういうとりあえずノってくれる感じのやつが一番好きになれるかもしれんよなと再確認した漫画でした。

 

 

*天野コエ(あまの こえ)

文芸部に所属する碧眼金髪の明るい女の子。名前の由来は「天の声」。いつのまにか文芸部にいた(恐怖)

名前の通り天の声を受信した時にそのまま口にするチャネラー兼スピーカー的な役割。電波系(直喩)

漫画作品などにおいて批判の対象になりがちな「作者が自分の思想をキャラクターを使って発言させる」を完璧に回避することができる「そもそも上位存在の言葉を代弁する」がコンセプトであるキャラクター。強すぎる。

ちなみにさっきからキャラ紹介に書いている「名前の由来は〜」というやつはすべてこいつが作中でご丁寧に説明してくれた内容。

目にハイライトがない時は受信した天の声を代弁している時。でもたまに目を閉じて話すこともあるのでそういう時のセリフはどっちの発言かわからん。

天の声を代弁するのはそれを受信した時だけなので、それ以外の時には普通に自我がある。仲良く他の部員とお話したり彼女の言葉で会話に入ったりもする。文芸部としての活動は特にしてない。どうして……

彼女が代弁する天の声は他のキャラには聞こえていないのか、基本的に無反応で終わることが多い。ただし「その単語は解釈が多様すぎて下手に解説すると叩かれるからやめて」と無理やりマトの口を塞いだ時にはそのまま解説がなされずに物語が進行したので、天の声が周囲に認知される・されないは場面に応じて都合良く変わってるのかもしれない。ご都合主義〜。

 

見せられないよ!的立ち位置も任されることも多いので、○○○さん時空を題材にした回「エンドレス生徒」では他の部員達の会話内の「○○○さん」の部分を死ぬ気で隠し続けて汗だくになっていた。かわいいね。

ちなみにマキナのとこに書いた「ぶちしたいと思っている」もコエちゃんが隠していた。表現規制仕事人。

調べてないけどえっちな二次創作のモザイクの8割はコエちゃんが使われてるんだろうな……

 

口元だけ笑いがちなマキナと違って笑う時はニコニコ笑顔なのがかわいい。変な電波拾うだけでそこまでおかしな思想は持っていないのでいい子だね〜になる。文芸部の部室ではだいたい遊んでるかお菓子を食べてる。女児?いい子だね〜。

オチをつけるのが難しい回で彼女が天の声を代弁してオチ担当にされることがしばしばある。(都合の)いい子だね〜。

 

 

 

〜この漫画の好きなところ〜

 

*設定や展開の持ち越しが多い

毎話完結する方式でメタネタやご都合主義を取り扱う作品なのに、漫画でありがちな壊れた建物や怪我も次の回では何事もなかったかのようになっているみたいなやつが全然ない。

なんなら「話跨いだら直ってると思ったんだけどなぁ」とか言い出す。14話で爆発した放送室とか50話くらい先の回でも黒焦げのままになっている。直したれや。

伏線回収とはまた別の感じで「その設定まだ生きてたんだ!?」が多いのが面白い。

 

*メタネタの活用の上手さと幅広さ

メタネタを題材にしているだけあり漫画あるあるみたいなネタがとても豊富。7巻分もあるのでそれはそう。

そして題材が題材だけあって漫画ならではの表現がすーごい多い。漫画的表現が多すぎてこれはアニメ化できないだろうなぁと思うなどした。絵・セリフ・モノローグ・オノマトペで構成される漫画ならではの表現が非常に多いのが好き勝手やってる感強くて最高。

ネタ幅についてはコエちゃんが「そのネタは別の回で使う予定があるからまだ掘り返さないで」と言ったりしてるのでネタ切れしないようにするのも大変なんだろうな……と思った。

メタネタとは別で世間様に対してすべき「配慮」も度々ネタにしたり、漫画以外のフィクションにおけるメタネタも題材にしたりするので本当に幅が広い。

 

 

〜好きな回の紹介〜

 

*俯瞰性のオベリスク

58話。6巻に収録。登場人物の意識の在処を題材にした回。

漫画におけるメタネタで「コマ前で〜」や「話で〜」と登場人物が発言することはよくあるが、そういった表現には「世界が漫画であるという自覚」だけでなく「別次元から漫画として世界を俯瞰できること」も必要なはず(読者のように世界を漫画として見ていなければ何コマ前かなどはわからない)。そうなった場合、登場人物の意識は紙の上に描かれたキャラクターの実体の中ではなく、漫画と読者の狭間の次元に存在することになるのではないかという切り口から展開される回。

基本この漫画メタネタで暴れ回る展開が多いけど、それだけでなく哲学的な方向性に話を持っていく回なのがめちゃくちゃ面白い。個人的に題材として一番好きな回。

 

 

*エンドレス生徒

42話。5巻に収録。コエちゃんのとこで書いたサザエさん時空の回。

この回の良いところ、コエちゃんがかわいい(揺るがぬ意志)

実質的なコエちゃんメイン回であり、他の回と違ってメタネタに切り込むこと自体への重要度が低い異質な回。見せられないよ!をするためにコエちゃんがひたすら奮闘する様を見せるために登場人物が必要以上に「サザエさん」という単語を多用したり必要以上にヒートアップした会話をする回である。

ナナシくんが「n回目の春が来た今こそあのメタネタに切り込むべきだろう……」と言い出した時点で全てを察した(天の声を受信した)コエちゃんがサザエさん隠しに走り回る。

サザエさん時空ってサザエさん時空以外に浸透している呼び方がほぼないので、このメタネタを題材にした時点で必然的に何度も「サザエさん」という単語が飛び交うことになるのでそれをひたすら隠し続けるコエちゃん。

さらにヒートアップしていくナナシくんとマトくんの会話でも隠す必要がある言葉がどんどん出てくるのでひたすら隠す。

コエちゃんが天の声を受信して発言や行動をする時は基本的に無表情でしたが、この回で初めて息切れしたり疲れ切った表情の天の声モードコエちゃんが見られるのが非常に新鮮。

こういうモードが2パターンあるキャラの機械的な方の人格が苦労する回すごい好き。

 

 

*ジャンル・ダルク

23話。3巻収録。マキナのとこで書いた問題のセリフの回。

問題のセリフのインパクトもさることながら、この回自体のインパクトもとても強い。

様々なジャンルに方向転換した時に備えて画風を変えて色々やったりパロディしたり島流しにされたりする回。それでも文芸部らしい活動はしない。どうして……

画風が切り替わるので雑誌とかで読んだら開くページ間違えたかな?となりうる回。

上手く言えないけど漫画的表現をフル活用してるのがひたすらに面白い回。

 

 

*枕の掃し

27話。3巻収録。枕詞を題材にした回。

またしょーもないタイトルである。

文芸部の合宿(←?????)で部員たちが枕投げならぬ枕詞投げをする回。ちなみに文芸部の合宿について何かをしていた描写は一切ない。どうして……

漫画のセリフにおいて文量を多くしてしまうと画的なまとまりも悪くなる上、かえって伝わりづらくもなってしまう。投げるたびに言葉を削っていき、セリフから不要な前置きなどを外していくことで段階的な会話をスマートにすることを目的として行われるのが枕詞投げである。ここの文芸部って漫画書いてんの?

なんかバラエティの企画みたいな独特のノリが愉快な回。

 

 

だいたいこんな感じです。思ったよりも長くなってしまった。でもそのくらい面白くて好みな漫画だったのでオススメです。メタネタやコメディが好きな人は読んでみてね。基本毎話完結で進行するので読みやすいぞ。

それではグッバイ デウス・エクス・マキナ